さて今回は長いタイトルですが、5月15日(日)に、富山県と新潟県に跨る難所である、親不知を越える北国街道(国道8号)が、通行止めの際の迂回路として用いられたという、富山県道115号上路市振停車場線から、新潟県道155号橋立青海停車場線号を走ってきました。
そんな今回のルート。
新潟県の秘境とも言える集落であり、山姥の伝説が古くから伝えられる、『上路』集落を通過して、
一昨年歩いた栂海新道と交差しつつ山間の林道を走り、およそ標高640mの大平峠を越えた後、かつての青海町、現新潟県糸魚川市へと至る道のりを走ります。
大きく山間をうねりながら進むため、国道8号を進む親不知方面よりも倍以上の道程を走る必要があり、更には標高差は最大650mを越える中々の難所です。
更には、山深い林道の常か、常々どこかで崩落を起こしているようで有り、あまり最近のレビューも見られず、情報も無いまま突入することに成りましたが、最悪一部崩落してても自転車を降りて、山肌を歩けば何とかなるだろうと突入することとしました。
それではスタートです。

【11時】
国道8号線をおよそ50キロ走り続けて、新潟県との県境である境川に到着しました。
いつもならばこのまま橋を渡って親不知方面へと進むところですが、今日は橋を渡らず右折して、県道115号を進みます。
さあどんな道のりが待っているのでしょう。
ワクワクしますね。

入ってすぐにその山深さに驚かされる道のりが拡がっていました。
すごいなこれは。
そして、もともと観光道路としての意味合いも強かったのか、この先更に山奥に入っても細目にカーブミラーや案内看板が設置されていて良く整備されていた道だったと思われます。
とりあえずスタート直後の看板では、『山姥の里』まで6.3キロ、『大平峠』まで15.3キロとのことです。

じわじわと標高を上げつつ先へ進みます。
5月とは思えないほどの暑さが、前進を阻みつつも黙々と進み続けます。
ほんとにこの先に集落なんかが有るのかな?
と思わせるくらいの道程です。

【11時25分】
上路集落に到着しました。
周囲360°を山に囲まれた中に突然現れるこの村はまるでおとぎ話の世界のようですね。
周囲から離れたこの里で、山姥伝説が生まれ、伝え続けられたのもわかる気がします。
意外に新しい家も有る、思ったより大きな村で、周囲の田んぼでは農作業を行う人の姿もチラホラ見受けられました。

入ってすぐに現れる、山姥の碑

古民家を改装したと思われる、山姥のお休み処とな。
残念ながら準備中のようです。

上路山村振興センター
中を見学してみたかったのですが、ここも残念ながら今日は閉館しているようです。
いつ開いているのかなぁ?

そして、ちょっと奥に入って見れば、金時のブランコ藤なる史跡が。
凄い藤の木。
地面には一面紫の藤の花びらが散らばっています。
金太郎で有名な坂田金時は、この山姥の子であるとのことです。

そして山姥神社。
想像していたよりもずっとひっそりとした静かな佇まいでした。
この周囲はなかなか雰囲気のあるところです。
ここに来ただけでも今日この道へ来たかいがありました。

そして、神社脇の砂防堰堤には見事な山姥のレリーフが取り付けられていました。
立派な史跡や建築物があるんだけど随分ひっそりとしています。
やはり、青海町が合併して糸魚川市になったことで、手入れや、史跡の扱いが行き届かなくなったのかな?

その後、時間も押してきていることも有り、集落を抜けて大平峠を目指します。
美しい山間の水田が拡がる素晴らしい光景が拡がっています。

【12時】
かつて登った白鳥山登山口への分岐点に差し掛かりました。
右折すれば林道山姥線が4キロほど伸びて、白鳥山への登山道となるようですね。
登山道には山姥洞といった山姥の史跡も有るようですが、残念ながら今回はスルーです。

そして、林道は河内谷川橋を過ぎたあたりから、補修の跡が見られるようになります。
そして、直したばかりの道も、さらに異なる場所で落石が発生しています。
正面の草だけの土手は、きっとかつて崩落して木が生えていないだけなのでしょうね。
林道の維持管理はいたちごっこで大変ですね。

しかし山深い道のりです。
先ほど通過した、上路の水田が遠目に見えています。
当然ですが、林道全体の雰囲気はグランフォンド糸魚川によく似ていますね。

【12時15分】
どうやら林道の崩落現場は全て修繕されていたようです。
すんなりと、懐かしの栂海新道との交点に到着しました。
以前はこの道を20キロのザックを背負って横断したのですが、今回は10キロ足らずの自転車に跨がって通過して行きます。

また、林道は山桜が今も多く咲き誇っており、想像以上に色彩に溢れた楽しい道のりとなりました。

山の切れ間からは海と親不知の集落が。
高いところまで来たなぁ。
この辺りの入道山直下のころが、もっとも標高が高く650メートルを越えるようで傾斜も厳しかったのですが、以後は下り基調となっていきます。

【12時45分】
苦しい登りを越えて、少し下った先に大平峠がありました。
大きな駐車場に、麻尾山展望森林公園が有ったりと、青海町があったころは、本来結構気合の入った場所だったのかもしれませんね。
途中何台かの車とすれ違いましたが、特に観光客もいない寂しい感じの場所です。
海も山側の展望も回りの木々が生い茂っておりいま一つかな。
しかし、灯りの無いこの場所は、スターウオッチングの聖地であるようですね。

なお、公園だけありトイレも有ります。
紙もちゃんと補充して有り、何とか使用に耐える状態です。
手洗い用の水もチョロチョロですが蛇口から出てきます。
どこから引いているのかな?

【13時】
休憩の後、青海町方面へと下山します。
この場所は三叉路になっており、上路から登って下る際は親不知方面と、青海町方面に下りる道がそれぞれがありますが、青海町方面は全面通行止の標識が車止めに付けられておりました。

どうしようかと悩みつつも、意を決して通行止めの表示の有る、青海町方面へと走り出します。
下りでスピードが乗りますが、落ちれば人生終了の断崖も有る道程であり、気を付けて進みます。

しかし、大平峠駐車場から少し下った場所から見る展望は素晴らしいの一言です。
断崖で遮るものも無く、栂海新道から延びる白鳥山に犬ヶ岳から朝日岳
そしてその先に広がる山々を一望できます。

緑の山々の奥の白い頂を持つ高山たちの眺めが凄い。
ちょっとした山の山頂よりも良い景色です。

そして、通行止めになりつつも元は青海町からの遊歩道であったと思われるこの道は、時折標識や展望台などが有ったりしますが、一部崩落していたり、看板は既に文字を読む事も出来ない哀しい状態の場所もあります。
手入れをしていない遊歩道ってあっという間に駄目になって行くのだろうなぁ。

更に下って通行止めの理由の一つが判ったような。
溝が土砂で埋まり、溢れた土砂が路面にかなりの区間で流れ出しています。
重機で溝掘り等の作業中のようですが、中々に大変そうです。

【13時半】
急な下りがひたすら続き、時折リムを冷ましながら、無事に橋立に到着しました。
すでに廃村のようですが、民家の跡地も有ったりと安心します。
そして橋立ヒスイ峡上流へ、およそ15キロの分岐点の様ですが、流石にスルーします。

しかし、少し下ると道程の先にあった橋立ヒスイ峡下流まで0.6キロの標識を発見し、せっかくだから見ていくことにします。
県道から離れてたどり着いた先は、荒れ始めた展望スペースでした。
全然手入れされてないなぁ・・・
緑に飲まれるのも時間の問題かも。

ヒスイ峡は実に美しい、涼しげな水の流れる峡谷でした。
この中の石に翡翠の原石があるのかなあ?
当然採取などは禁止されていますので眺めるだけです。

更に下って、清水倉の廃集落を越えれば、標高1,221mの【黒姫山】が正面に現れて、これでもかというほどの威容を見せつけてきます。
これはすごい。圧倒されるわ。

そして青海川に沿ったこの渓谷沿いの道は正に絶景の宝庫。
荒々しい岩肌と、水面の輝きの組み合わせを、ついつい立ち止まって眺めてしまいます。

途中の岩肌には、鉱山道の跡がいくつも残っていました。
ここは石灰岩の塊のような地形であり、日本最大級のセメント工場がこの先に存在しています。
奥はどうなっているんだろう?

そしてさらに絶景。
人工的に切り開かれた岩肌が作り出す形状が景色に溶け込んでいて実に見事です。

いやー凄い。
鉱山もここまで来ると芸術のように見えますね。
かつて栂海新道を開いた方々もこのような景色を眺めながら山を切り開いていったのでしょうね・・・

青海川を渡って巨大なセメント工場群が一望できます。
かつては工場までJRの線路が引かれていたそうな。
橋のすぐ脇に線路が併設されています。
この工場群が、夜になればまるでイルミネーションの様に美しく輝くのです。
北陸自動車道から眺めることが出来ますね。

そして、数時間ぶりに自動販売機と再会。
今日は夏の様に暑い日でしたので、冷たいコーラを一気飲みして生き返ります。
美味い~

【14時半】
そして青海駅に到着です。
今日の冒険も終了。今日はここから輪行で帰路につきます。
今から親不知を走って帰るのは流石に面倒です。
そして、本当は本に載っていた駅前の食堂で食べたかったのですが、まさかの臨時休業だったため、仕方なくコンビニで腹を満たします。

電車の時間まで間があったため8号から海岸へ出てみます。
海も空も美しい、最高の天気でした。
今日は良い一日だった。。。

小一時間の後、再び青海駅へと舞い戻り輪行の準備を整えます。
前輪のみ外す輪行袋のコクーンは場所を取るため特急等では使用しにくいのですが、地方のローカル在来線程度でしたら結構使い勝手のいものです。
これにて以前より気になっていた、市振から青海までの迂回路であるこの30キロ足らずの道程を完走することが出来ました。
自宅からの道程にしても100キロも走ってはいませんが、200キロを走るに勝る満足感です。
幸いにも崩落地点も無くスムーズに走ることが出来た上に、快晴の最高の展望を楽しみつつの旅となりました。
この様な満足の行くサイクリングが出来る日は1年に早々あるものではありませんね。
次はどんなことをしようかな?
それでは今回はこのへんで。